2011年4月20日水曜日

第7回勉強会(2011年4月16日)報告

『図書館を育てた人々 日本編I』を読む(5)
石山洋「中身の充実に努力:太田為三郎」

日時:2011年4月16日(土) 14:00〜17:00
会場:キャンパスプラザ京都2階和室
発表者:吉間仁子
出席者:12名

東京図書館、帝国図書館に勤務し、「和漢図書目録編纂規則」制定や「日本随筆索引」などのツール整備に尽力するとともに、日本図書館協会の会長職や台湾総督府図書館長も務め、初期の図書館講習所を支えた太田為三郎(1864-1936)の事績について、文献を渉猟した吉間氏から丁寧にご紹介いただいた。
発表のなかでは、和田万吉との生涯に渡る友情についてのエピソードが紹介されたほか、ツールの整備という意味では、わが国におけるレファレンスサービスの展開のなかでも太田を評価してよいのではないかとまとめられた。今後の課題として、石山氏らによる先行研究が註なしで引用している太田の日記や原稿、公文書類など資料の確保が必要だと述べられた。

主な質問・議論の要旨は以下のとおり。
  • 史料については、NDL館内限定公開のものもあるが、近代デジタルライブラリーで閲覧可能なものが増えつつある。『図書館雑誌』の記事のみに頼らないで色々調べていくことがおそらく今後の図書館史では大事だと思われる。
  • 事績については、市島謙吉(春城)の『春城日誌』が、早稲田大学の図書館紀要に以前から連載されていて一部はCiniiでも公開されている。見るとちょうど太田の『帝国地名辞書』刊行祝の記事が出てくるので、初期の日本文庫協会(日本図書館協会)メンバーということで見ていけば、年譜の空白部分がかなり埋まるのではないか。
  • 台湾時代のブランクについて、張圍東『走進日治台湾時代:総督府図書館』台灣古籍出版, 2006.1という本があって、かなりの部分を埋めてくれると思われる。ほかに山中樵のことも書かれている。これを見ると日誌等を典拠にしている節があるので、太田の私的な日記か業務日記かはわからないが、台湾に史料は残っているのだろう。
  • 詳細はわからないが、日図協も百年史を作った時に史料を結構集めているのではないか。


事務局の個人的な感想で恐縮だが、とくに今回の報告では、基礎的な事実についても、文献による食い違い(勘違い)が生じていることを認識させられたので、発表者が課題として挙げた資料の渉猟という問題は依然として課題だろうと思われた。
なお今回は新年度ということもあって新規の参加者も増え、活発な議論が展開された。
終了後は懇親会が行われた。

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