日時:2016年7月30日(土) 14:00~17:00
会場:京都商工会議所第一会議室
発表者:今野創祐氏
参加者数:7名
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今回は今野氏から近代日本の目録史について発表いただいた。
今野氏が目録史に関心を持ったのは、当会で天野敬太郎を取り上げたことがきっかけ。その後目録の歴史に関心を広げて調べていくうちに、目録の翻訳の問題点をきちんと押さえる必要があるのではないか?と思うようになったとのこと。
江戸時代にも本を分類したものはあるが、標準化をはかるような目録はなかった。明治になって洋書も流入してくるようになって書籍を適切に管理するために、目録への志向が生まれたといえる。この問題に関する先行研究として、志保田務先生の博士論文がある。日本の標準目録規則の発展史を扱っているが、欧米の目録規則の翻訳・受容の具体像はまだ検討の余地がある。
欧米では、革命後のフランスにおけるフレンチ・コード、イギリスのパニッツィの91カ条目録規則など標準化の動きが生まれてきたが、世界的な影響を与えたのは19世紀に登場したアメリカのカッターの辞書体目録である。こうした発展を受けて、20世紀になると英米で合同で目録規則を策定しようという機運が出てきた。
こうした流れを受けて日本でも東京書籍館などで目録標準化への動きが起こる。西村竹間『図書館管理法』(1892)で紹介された目録編纂法、1897年に和田万吉が翻訳した東京帝国大学付属図書館の「洋書著者書名目録編纂略則」、日本文庫協会の「和漢図書目録編纂規則」(1893、1900年の図書館管理法に掲載)、1910年の日本図書館協会の「和漢図書目録編纂概則」、1926年の鞠谷安太郎、中島猶次郎『目録編成法』(間宮商店刊行)、1932年に日図協の「和漢図書目録法」、1942年の青年図書館員聯盟『日本目録規則1942年版』などを取り上げて比較し、それぞれの特徴が紹介された。
発表のなかでは、和田万吉の図書館用語の翻訳の問題点や日図協の和漢図書目録法では書名記入か著者主記入かをめぐる主記入論争という激しい論争を呼び起こしたことも紹介された。
主な質疑は以下のとおり。
- 目録の先行研究のほか、分類に関する先行研究にはどのようなものがあるのか。
- 昔の図書館雑誌の論争的性格について
- 大橋図書館で行われた図書館事項講習会では目録法は誰が担当したのか?その影響は大きいのではないか(→確認したところ、和田万吉が講師と判明)
- 間宮商店について
- 目録史において、ドイツの影響はあったのか。
- 目録をとるときの情報源については、変化が見られるのか。
終了後は、懇親会が開かれた。
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