『図書館を育てた人々 日本編I』を読む(1)田中稲城/伊東平蔵
日時:2010年3月6日(土) 14:00〜16:30
会場:キャンパスプラザ京都 2階 和室
発表者:大場利康(国立国会図書館関西館, tsysoba)
出席者(50音順):石道尚子、江上敏哲(国際日本文化研究センター, egamiday)、佐藤久美子(国立国会図書館関西館, satoqyu)、谷航、長尾宗典(国立国会図書館関西館)、吉間仁子(国立国会図書館関西館)、米井勝一郎(K_y0ne1)
冒頭、事務局でもある発表者から、勉強会開催までの経緯について次のような概略説明があった。この勉強会は、東京で国立国会図書館職員等を中心に行なわれている勉強会「文脈の会」メンバーのうち、二人が関西館に揃ったことをきっかけにしたもの。さらに「図書館員であつまって飲み会@大阪」で発表者が飲み会参加者に声をかけた結果、何人か関心を示す人がいたことで、具体化したものである。
以下、発表者から資料に従って報告が行われた。まず、何故、石井敦編『図書館を育てた人々 日本編1』(日本図書館協会, 1983)を題材として選択したのかについて説明があり、続いて、西村正守「田中稲城 我が国最初の図書館学者」について、概略の説明と、補足情報の紹介があった。
出席者からは、田中稲城について論文を書いている有泉貞夫が、日本政治史で著名な研究者(基礎的な文献をいくつも執筆)であるといった紹介や、同志社大学が所蔵する田中稲城文書とこれを含む竹林熊彦文書について、実際に現物を見に行きたい、といった希望が出された。(終了後、Twitter上では、竹林熊彦文書と田中稲城文書については、同志社大学の貴重書デジタルアーカイブの竹林文庫として、細目の検索と一部本文画像の閲覧が可能となっていることが紹介されたので補足しておく。)
休憩を挟み、後半は竹内悊「伊東平蔵 先覚者の中の先覚者」について、概要説明と、補足情報の紹介が発表者から行われた。伊東平蔵の大橋図書館時代については、三康図書館に資料が残っている可能性があること、伊東の書簡・日記等については現在も遺族が持っている可能性が高いのではないか、といった指摘が参加者から寄せられた。また伊東の図書館に関する知識の習得については、初期の文部省勤務時代についても確認する必要があるといった指摘があった。
発表終了後は、雑談的な懇談となり、次のような話題が取り上げられた。
- 『図書館を育てた人々 日本編1』に採り上げられている人々は、出身階層(旧藩士など)・学歴(帝大・留学経験)などから見ても、ほとんどがエリートであるが、一方で、青年図書館員聯盟のメンバーはそれとは対照的な出身・学歴であり、『図書館を…』に出てくるような人たちに対する批判者としての性格が強かったのでは。
- 『図書館を育てた…』から、原形となった『図書館雑誌』の連載には登場した内田魯庵が落とされているというのは、内田が「図書館員」ではなかったからではないか。図書館を育てた、という意味では、出版関係者など、もっと広い領域の人が採り上げられていてもよいはずだが、図書館員中心の選択になっているようにも見える。
- 『図書館雑誌』の索引は、「図書館雑誌総索引」よりも、学術文献普及協会の復刻版の索引の方が、詳細で信頼性が高い。
- ナショナリズムと図書館の結びつきについては、戦後、語られにくい時代が続いていたが、実際には、戦前に図書館に積極的に関わった人々の多くは、国民国家の確立を目指したナショナリストだったのではないか。博物館とナショナリズム、アーカイブズとナショナリズムという論点は比較的頻繁に言及されるが、図書館についても同様の視点が必要ではないか。
(文責・大場)
発表資料(pptxファイル, 239KB)(背景なしpdfファイル, 200KB)
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